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Sunday May 08, 2022
平和経 第200話
Sunday May 08, 2022
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3.科学と絶対価値
日付:一九七四年十一月二十二日
場所:イギリス、ロンドン、ロイヤル•ランカスター・ホテル
行事:第三回「科学の統一に関する国際会議」
尊敬する議長、高名な科学者、著名な教授、ならびに学者の皆様。「国際文化財団」により発起された第三回「科学の統一に関する国際会議」に御参加された皆様を、心より歓迎する次第です。
過去二回の大会が、第一回は一九七二年十一月にアメリカのニューヨークで、第二回は一九七三年十一月に日本の東京で開催されたことは、皆様も御存じのことと思います。本大会の期間、自由で率直な意見交換が行われる雰囲気がつくられ、持続することを願い、そのような雰囲気づくりのために私は最善を尽くしてきました。また大会による豊富な成果に大いに満足し、その成果のために物心両面から協力してくださった関係者の方々に感謝の意を表す次第です。
科学の発達と人類の当面の課題
今日においては、ますます深刻な問題が発生し続けており、それらが人類の当面の課題として登場しています。このような挑戦的な問題に対する解決には、偏向的、あるいは局部的なアプローチよりも、全世界的なアプローチが求められます。ですから、本大会にお集まりになった多くの著名な学者の方々の英知と知識が実に求められ、渇望されているのです。
私も一科学者として、多大な関心をもって科学と技術の発達を注目しています。科学や技術、そしていわゆる科学的方法と呼ばれるものが、人類の生活に多大な影響を及ぼしてきたことを私は知っています。科学は、現象界を観察し、研究することで、肉体の感覚によって感知できる枠を越えて、現象界を拡大、拡張させてきました。
顕微鏡によってのみ見えるバクテリアの存在を私たちは知っています。人間の心など及びもつかないほど、天文学的なスピードで計算するコンピューターに導かれ、月の世界へ旅行した人もいる反面、それを日常的に可能なものにしようと語っている人もいます。
肉眼で見れば地球は平らに見えます。しかし、科学は私たちをして地球が丸いことを認めさせたのです。ダイヤモンドは固い固体のようですが、実際それは真空の空間を回転している散乱状態の原子群であることが分かるとき、驚かざるを得ません。より抽象的な次元になると、ある実体から拡大された実体への変化は、古典力学から量子力学への変化と決定論的方式から蓋然(がいぜん)的方式への変化とによって描写されるのですが、その二種類ともが、常識的に生きている人々を当惑させるのです。
科学の発達は私たちに途方もなく多くの知識を提供してはくれますが、私たちはいまだにその知識を自分のものとして受容できない無能さと、情報を体得し、その知識がより深く暗示するところを十分に理解できない苦痛を味わっているのです。この無能力は、不安と混乱と半信半疑の状態へと引っ張っていくのですが、それは確固たる思考の基盤と基準を喪失してしまったところに起因するものです。結局、私たちは、自分自身と科学の発達によって突然膨張した現実との間において、不均衡な状態に置かれていることを感じているのです。
超国家的世界観と協力の必要性
人間の限定された思考機能の不調和と不均衡に対する解答を、私たちが精神界で探し出す可能性を考えるとき、禅や瞑想、そしてその実践が東洋で長いこと行われ、また大切にされてきたことが、最近、西洋でも科学的研究の論争対象になっていることは決して偶然ではないと言えます。霊感に関する研究は、学問世界で学者の相当な関心を引いてきました。特に、いるかが人間と明らかにコミュニケーションがとれるという発見は、注目に値します。同じ分野で、植物が人間の愛と感情の状態によって反応することが実験で立証されてきました。このような発見は、動物や植物の世界が意識や理性的な面で欠けているという現在の私たちのもつ見解が、限定されたものかもしれないということを示唆するものです。
人間と別の被造物との間に調和の取れた共存の実現が可能であり、すべての存在の中心である人間が、本質的な調和と一致の中で全被造世界を回転させる回転軸として役立っていることを私たちはまた想像することもできます。他に注目に値する事項としては、教育者と医者の役割です。それらは途方もなく多くの量の情報を正確かつ速かに処理するコンピューターの能力によって、徹底して影響を受けると言っても過言ではないでしょう。素粒子と宇宙論に関する未来の研究が、空間と時間に対する私たちの観念を変化させるかもしれないと幾人かの科学者たちは示唆しています。
ローマクラブによって示されたある研究は、近い将来に公害、人口増加、天然資源の枯渇、そして急速な工業化によって悲惨な結果がもたらされることを告げています。最近繰り返される核実験のために、オゾンが減少していることが発見されています。皆様も御存じのように、大気圏におけるオゾンの存在は、地球上の生物の生存にとって絶対必要不可欠なものです。なぜなら、オゾン層がなくなる場合には、蛋白質の分子が破壊されるからです。このような諸問題に対する解決策は、科学者たちだけの努力や、ある特定の人やグループまたは国家の努力だけで見いだされるものではありません。先ほど言及したローマクラブの研究は、世界の資源と環境の限界を明確に指摘し、このような世界的な問題に対する妥当で完璧な解決のためには、全世界的なアプローチと協力という努力が絶対に必要であることを明白に提起しました。
このような問題は、世界のすべての民族間に献身的態度と協力を必要とし、いかなる社会や国家の利益をも超越した世界観を必要とするものです。そのような協力精神は、全人類が同じ家族の構成員であると自覚する時にのみ、成し遂げられるでしょう。そのようなイデオロギーに対する人間の革命的な変化は、長い間必要とされてきたのであり、またそれは人間の生存のために必要不可欠なことです。そして、世界のすべての国の教育制度において、競争に勝利した人だけが獲得できるという競争の長所と適者生存の論理が過度に強調されてきました。これは平和な共存の世界へと導くための健全な人間の努力を侵食する伝染病のようなものです。いずれにせよ、現在の有識者の間では、そのような競争の強調が変わりつつあり、生存のために協力が不可欠な要素であることを悟り始めているのです。このような見解に照らしてみるとき、教育の目的とその哲学は、深層から変革が起きなければならないのです。
過去に人間生活を豊かにすることに対する科学と技術の貢献を、私たちは深い反省もなしに受け入れました。今や私たちは疑問を抱き始めています。いくつかの不安に満ちた疑問が心に生じているのです。私たちはより幸せになっているのか。私たちは道徳的により健全になっているのか。他の人を愛し、関心をもち、思いやりをもつようになりつつあるのか。
このような問題に対する解答は、統計的な結果分析によって単純に発見されるものではありません。なぜなら人間は、別々に測定することのできない、数多くの様相として現れるからです。実例として愛、理想、創造の喜び、神様に対する信仰を、皆様各自が考えてみてください。このような人間らしい人生の姿を保存し、啓発する問題は、私たちの探求すべき最大の課題として残されているのです。
科学を正しく利用する問題
このような課題を考えれば、科学的探求の発見によって考案された莫大な量の情報を判断し、正しく利用するという問題は、深刻かつ真剣なことです。科学の価値を過度に強調する風潮を再検討しなければならないかもしれません。科学的真理というのは限定的なものです。すなわち、一時代の科学的真理が、次の時代には認められないこともあり得るのです。限られた事実に基づいて設定されたモデルの設定過程で、理想化、単純化、近似化の過程を繰り返します。結局、真理に近いものを知ることができたとしても、絶対的真理は知ることができないのです。科学は高度に成長し、それが人間を支配する様相を示しています。
科学は事実の決定に際しては、厳格に徹頭徹尾、精密で細密でなければなりません。しかし、科学情報や業績を活用する段階に際しては、人間の創造力の一領域として、その位置を忘れてはいけません。科学は、美術や音楽作品のように、使われ、調整され、評価されるように、人間の領域内にとどまらなければならないでしょう。
人類歴史を振り返ってみるとき、いかなる時代でも、新しい未開拓の分野、文化の発展である程度の頂点、そして医学や他の科学の全盛期など、多くのものの発展が歴史上にありました。それでも過去における科学と技術の発達は、自然の征服と開発を主な目標としてきました。
今日、正にその科学は、私たちに、新しい倫理的基準の確立を要請しています。その新しい倫理は、自然を愛し、人間の価値を再検討する問題、そして人間相互間における協力の必要性と関連していなければなりません。地球上のすべての生物が調和して共存する理想世界を建設できる新しい価値観と新しい倫理、道徳的基準を確立できるよう努めなければなりません。
科学と技術の発達は、私たちが人間として存続し、私たちの生活の中で人間愛を大切に守っていくことが必須不可欠であることを真剣に反省するよう促す論争点を提示してきました。科学技術界が、人類の福祉のために動員され、人間活動の協力精神が科学技術を扱う人間にとって有効なときにのみ、これらすべてのものが可能であると私は確信します。
私は、皆様からそれに対する解答が出てくることを心より渇望し、期待しています。皆様の見解と知恵に従い、各自の研究結果を収集することによって、これは間違いなく実現されるでしょう。現在の世界をより高い次元と絶対価値の世界へと連結させて導いていく架け橋の役割を遂行してくださることを、私は心から強く求めてやまない次第です。御清聴いただき、誠にありがとうございました。