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Friday May 27, 2022
平和経 第218話
Friday May 27, 2022
Friday May 27, 2022
15.絶対価値と現世の再評価
日付:一九九一年八月二十四日
場所:韓国、ソウル、シェラトン•ウォーカーヒル•ホテル
行事:第十八回「科学の統一に関する国際会議」
尊敬する議長と分科委員長、著名な学者ならびに紳士淑女の皆様。私の祖国である韓国で、皆様に再びお会いすることができ、大変うれしく思います。この韓国の地で皆様と共に「未来の世界文明」について議論してから、はや十年になります。そのとき私は、東アジアから始まり全世界を連結する国際平和高速道路プロジェクトを提案しました。また私たちは、皆様の学問的研究成果を出版し、全世界の新しい世代に肯定的な影響を与えることを目的とする計画にも着手しました。十年前は、このような計画が夢のように感じられましたが、今ではその輪郭が定まり、基台が既に造成されています。既に、日本と韓国をつなぐトンネルの基本設計図が作製され、試験トンネルが建設中です。
私たちは、皆様の論文や著作物を出版する「パラゴンハウス出版社」をもっており、雑誌「ワールド•アンド•アイ」を出版しています。昨年提唱し、皆様に案内状をお送りした、「世界平和連合」と「世界平和宗教連合」が、この度、皆様の立ち会いのもとに創設されるでしょう。
尊敬する世界の碩学の皆様。私たちは、再評価を要する転換期の現代世界で生きています。価値問題を重要視した私たちの会議のテーマは、以前には単なる予言的なものとしてしか捉えられなかったかもしれませんが、今日に至っては、所々で新しい価値に対する要求が起きており、現実の重要課題となっています。東ヨーロッパとソ連で起きた劇的な変革以後、さらに普遍的に、これを実感するようになりました。人々は、共産圏の没落以後、西欧社会の既存価値と体制の優秀性を語り、自負心をもっています。しかし、共産圏と対決した自由陣営を含む、その他の世界はどこへ向かっているのでしょうか。人類の幸福を保障する、希望的な前進をしていると思いますか。現世界のもつ問題点は、共産陣営の没落だけで解決されるのではなく、根源から原因を究明して解決しなければなりません。現代社会は、すべての体制と生活様式が根本的に再評価されなければならず、覚醒された人類の新しい心に適応することが求められています。
結論から言えば、今日の価値体系の混乱は、根源的に神様と人間との本然的な縦的秩序が崩れたことに由来します。正しい軸を失って横的に立てた人為的な秩序、すなわち世界の中の様々な体制と価値が、方向を失ったまま揺れ動き、ぶつかり合っているのです。
宇宙は、個々の物質だけを基盤として存在するのではありません。世界は孤立して、独立した個体の単純な集合体ではありません。物質は関係性を通して現れる一次的エネルギーによって存在しています。社会は、個体間の授受と相対関係の中で生存、繁栄、発展します。二つの物質の関係性の背後に、また二つの個体の授受関係の背後に、共同の動因と目的性を付与する高次元の縦的秩序が先に存在しています。例えば、人間には、神様と人間自身のために、至高な喜びと愛を感じることができるように自由が与えられています。人間がその存在目的を成し遂げるためには、まず神様の真の愛を相続しなければなりません。
人間生活の中で、ために生きる真の愛がすべての相対関係の基本ですが、これは父母の真の愛を動機として体恤するものです。神様の真の愛を根とした父母の真の愛によって、人間の個体は完成するようになります。完成した個体が、真の愛の理想的な夫婦となった家庭で、その子女に真の愛を伝授するのが、創造の秩序なのです。地上の理想世界は、完全な一人の人から、真の愛による家庭、社会、国家、世界へと拡大していくのです。現在の世界は、このような理想世界とは、その出発から異なっている世界です。人間が、神様の創造原則のうちで最も貴い真の愛の秩序から離れた、そのような堕落の結果が拡大して現れた世界です。神様の創造秩序を度外視したまま、人為的な組織形態や法則、秩序ばかりを重視する今の世界は、理想的な個人、家庭、そして民族を養成することはできません。人類の真の明るい未来は、何によって保障されるのでしょうか。
尊敬する碩学の皆様。皆様は自然界と社会の発展について、誰よりもよく御存じのはずです。私たちの自然と社会は、毎日、暴力と毀損が絶えません。私たちが普段、呼吸する空気、飲んでいる水、口にする食糧が、日増しに汚染されています。私たちの社会は、科学が発達し、生活が便利になっていくにもかかわらず、絶望的現象が加重されつつあります。二十一世紀の人間は、宇宙を創造した神様の根本原理を逸脱しては、これ以上地球星の主人として存在することはできないでしょう。人々が願わなかったとしても、人類の未来は、より密接な人間関係を求めています。将来、人々が地域と民族と肌の色の違いを超越し、より一層近く交わって生きていかざるを得ない「地球一家族時代」が近づいています。多様な宗教や伝統、文化、そして互いに異なる生活意識を、利害関係の次元を越えて、互いに調和して受け入れざるを得ない世界が近づいてきています。個人やある集団が、利己的な選択により自分だけの分別された逃避先を所有することはできなくなります。人間は、自然万物をこれ以上利己的な目的だけで強制的に占領することはできず、全体と後代のための、より大きな目的のもとに活用し、開発しなければなりません。
このように迫りくる新しい時代、新しい社会の基本秩序は何であり、その社会の主人はいかに養成されるべきでしょうか。それは、神様の創造の秩序、真の愛の秩序を基本軸としてこそ、その答えを得ることができます。
尊敬する世界の学者の皆様。生涯を捧げて、一貫して神様のみ旨を実践してきた私が、二十年間に十八回もの「科学の統一に関する国際会議」を続けて開催してきた理由を、そのような点から理解することができるでしょう。既に数十年前に、到来する未来社会を予見した私は、周囲の無理解の中にあっても、確信をもって、この大会のために物心両面の支援をしてきました。一九七二年、本大会が初めて開催された時から、通例を打破した構成で、自然科学者と人文•社会科学者を一つ所に招き、諸学問間の調和と統一を強調してきたのも、未来の人類のためにという一念によるものでした。
各学問の分野別の特性や研究の専門化は重要ではありますが、学問研究が相互に協力し合い、補完されなければならず、その研究成果が、善の目的を中心として統合され、活用されなければなりません。科学者たちにとってはさほど歓迎できない「絶対価値」を主題として価値問題を強調してきたことも、その理由からでした。今では、皆様を含む世界の多くの学者が、私の意向に共感し、協力して会議を組織し、研究を続けてきてくださっていることを有り難く思っています。
絶対価値を軸として、総合的な学問研究をする「科学の統一に関する国際会議」は、これから、その研究成果を積極的に教育し、実践しながら、人類の将来に寄与する段階へと飛躍しなければなりません。「科学の統一に関する国際会議」が産室となって、世界の九十数ヵ国に「世界平和教授アカデミー」が組織されたのも、文化世界を成し遂げる事業に、各地の学者たちを積極的に参加させるためです。
良心的な碩学たちの実践運動に、多くの人々が期待を集めています。社会において最も尊敬を受ける有識者たちが率先し、次世代の若者たちに正しい価値観と世界観を伝授することこそ、専攻分野の教授に劣らず重要なことであると思います。既に、韓国と日本で実施して良い成果を上げたように、世界の学者たちがチームを構成し、各国を歴訪しながら幅広く指導することも重要です。現代人、特に若者たちを、麻薬と享楽、暴力と戦争の罠から保護し、彼らにビジョンを植え付ける運動に、学者たちの全世界的な参加が求められています。私は、「科学の統一に関する会議」を母体とした皆様の創意的な実践が、新しい文化世界を創建することを確信しています。
最後に、私の祖国で開催される今回の大会で、多くの有益な討議が行われ、良い結論が導き出されることを期待する次第です。私は、韓国が受難の歴史の中でも、家庭の伝統をはじめとする美しい文化遺産を守ってきたことを誇らしく思います。また、連続した戦禍の中から急速な繁栄を成し遂げた韓国経済の基盤にも感心しています。皆様がこの国に滞在される間、韓国を訪問した価値を感じていただければ幸いです。神様の御加護が共にあることを祈りながら、私の話を終えたいと思います。ありがとうございました。