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Tuesday Apr 02, 2024
御旨と海 第58話
Tuesday Apr 02, 2024
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なぜ我々はマグロを捕りに行くか
1983年 8月31日 グロースター
ムーニー達が水産業を始めた事を誰もが疑いもなく知っています。そして漁を始めた結果、我々がどういう類の人間であるかということが漁師達にも分かるようになりました。雨でも晴れでも、どういう天候の下でも我々は出かけます。我々には女性の漁師すらいて、彼女達は男達と同様、ある時は男性達以上に実績を上げています。それがグロースターの漁師達の目に入らないはずがありません。
確かに彼らはそのことを噂しています。そのニュースは広がり、市長を含めた市の役人の耳にまで達しています。先生が一九七四年初めてここに来て以来、過去十年間でどういう変化が生じたのかを彼らは知っています。当時マグロを捕る漁師達の一日の労働時間は、一般的に言って、朝十時頃海に出て行ってマグロが釣れようが釣れまいが午後二時頃には戻って来るというものでした。
当時マグロには値段がついていませんでした。もしマグロを釣ったら、波止場に戻ってきてそこでマグロの隣に立って写真を撮り、それが終わればその魚を残したまま彼らは立ち去りました。一ポンド五セントにしかならなかったのでそれを売ろうと努力する価値さえなかったのです。時には、その魚は腐るまで波止場にそのまま置かれていました。
また、毎年マグロの値がどの位の割合で上昇していったかも漁師達は覚えています。一年に十セントから十五セント、あるいは二十五セントあるいはそれ以下しか上昇しませんでした。値段が急激に上昇するようなことはありませんでした。ところが今年、一ポンドの値段は五㌦近くまで上がりました。この傾向は続くし、そのことを彼らも知っています。ほぼ間違いありません。彼らは我々のムーブメントがこの傾向に影響を与えたのだということも認識しています。
もし一ポンド五㌦の値段のマグロを二百本釣ることができれば、我々は損得無しになるか、あるいはそれよりも良い状態になります。毎年我々が味わっている損失をもはや被らなくてもすみます。我々にはビジョンというものがあり、それが我々の努力を導いているのだということを知ってもらいたいのです。こういう状態をいつまでも続けさせるつもりはありません。我々は二、三年のうちに、こういう損失状態を乗り越えるつもりでいます。目の前にある結果を信じてはなりません。その過程を信じなさい。我々はある目標に向かって進んでいます。その目標を信じなさい。
伝統の確立
我々は遂に利益を得るようになるまで、何年も何年も損を続けることができます。しかし他の人達はそれができません。彼らは一年か二年損をしたらやめてしまいます。我々は決して途中でやめません。それが我々の秘訣です。このプロセスがある点まで達すれば、損する代わりに利益を得ることができるようになります。その日が来れば、その日は必ず来るのですが、マグロに関する限り、レバレンド・ムーンは「王の王です」という絶対的確信を人々は持つようになります。
我々は自分達が伝統を重んじる人間だということを知っています。我々の伝統はいつでも、まず確固たる基盤を造ることなのです。確固たる基盤無しには、どういう教会もビジネスも家庭も人間も成功することはできません。我々はこのことを知っています。今、彼らにはそれが分かりつつあるのですが、まだ我々が希望するほどではありません。しかし二、三年経てば、彼らにも先生のやっていることがはっきり分かるようになります。水産業が毎年上がったり下がったりするのではなく、毎年上昇の一途をたどるような伝統を先生が築き上げつつあるのだということを彼らは知るようになるでしょう。この努力が単に我々の利益のためだけにあるのではないことを、彼らははっきりと理解するようになります。
アメリカのフロンティアは一つだけ残されています。それが水産業です。水産業は莫大な可能性を秘めています。世界の主要漁場の七〇パーセントまでがアメリカにあるということを誰もが知っています。残りの三〇パーセントはノルウェー、日本、その他の海洋諸国が共有しています。皆さんは全世界の漁獲高の七〇パーセントがどの位であるかを心に描くことができるかもしれませんが、漁獲高の重さと大きさをもとに考えれば、それが想像を絶する驚異的なものであることが分かります。海の七〇パーセントがアメリカに属していますが、海全体の大きさは、今我々が住んでいる陸地の二倍以上の面積があります。海は地球の三分の二を占め、陸地は地表の三分の一しか占めていません。我々が今まで陸上で得ることができた量を遥かにしのぐ蛋白質を、我々は海産物から得ることができます。もし賢明な捕り方をすれば、魚は毎年いつもそこにいることになります。地球上から石油のようなものを採掘する場合、取り尽くせば後には何も残りません。一方、魚の捕獲を意識的に行えば、水産業はとどまることなくずっと継続することができます。
平均的なアメリカ人はこういうことに心を配るでしょうか。たいして心を配りません。彼らはこういうことに頭を使わないし、それが未来に対してどういう意味を持っているのかということも考えません。レバレンド・ムーンの次の世代は漁師になるのだと考えるアメリカ人は一人もいないでしょう。しかし皆さんはそうなるし、皆さんの次の世代、そのまた次の世代もやはり漁師になるでしょう。我々は世代から世代とますます優れた漁師になっていくことでしょう。ではなぜ我々はそういうことをやりたいのですか。人類のためになるからです。
アメリカ人達はそのように考えていません。彼らは「私はこういう厳しい生活を送るけれども、私の子供達には敢えてこういう犠牲になる生活を送ってほしくない」と考えています。ある人々は、子供達が海に出ていくのを止めてすらいます。なぜでしょう。それは厳しい生活だし、収入も大したことがないからです。反対に、先生はこの同じ漁師達をどうやって育てるかについて考えています。結局、我々は彼らが今までの生活でやってきたのと同じことをやろうとしています。我々は彼らを受け入れ、彼らの面倒を見ます。我々は我々の成長速度と同じ速度でもって、彼らを引っ張っていくつもりです。
水産業は現在も極めて重要な産業ですが、将来はなおさらそうなっていくでしょう。たとえ、我々の教会のメンバー達が他に何かやることを見つけ他の場所に行かなければならなかったとしても、我々はアメリカの漁師達が我々から確固たる基盤を造る伝統と精神を受け継ぐのを見届けなければなりません。そして、我々がしばらくの間ここを留守にしても、彼らをこのビジョン実現のために励まさなければなりません。
今漁をやっている人々は、陸の上でやる仕事から得られる収入より五〇パーセント多い収入が得られない限り、自分達の仕事に満足することができません。この中には、船を使って海岸で働く仕事とか波止場で働く仕事も含まれています。なぜでしょうか。陸の上では、たとえ雨でもまた天候が思わしくなくても、自分のやることに計画を立てることができるのです。しかし、海の上ではそういう計画は立てられません。皆さんの方に働く準備ができていても、漁に行けない日もあります。天候が理由でそうなります。だから彼らはいつでも安定した収入に頼るというわけにはいきません。つまり長い目で見て、同じ額の収入を得るためには、陸の上で同じ時間を働いた場合に得られる収入よりも、少なくとも五〇パーセント多い収入を得なければならないことになります。悪天候を理由に失う日数を考慮に入れておかなければなりません。
しかし実際にはどうかと言うと、最近漁師達は他の人達が陸の上で注ぐのと同じ労力を投入しているけれども、収入が五〇パーセント少ないことが多いのです。時には多いこともありますが、普通は少ないのです。その結果どうなるかと言うと、大抵のアメリカ人漁師は、少しでも漁よりましな仕事が丘の上に見つかればすぐにそれに飛びつき、結局は陸の上で働く方を選ぶようになります。だから、この水産業を維持していくことのできる人は誰であろうと、幾つかの重要な分野の管理をうまく行わなければなりません。
まず、労働時間をどのように維持するかです。我々は普通の人より早く起き、できるだけ長く海上にいなければなりません。他の人達が一日しか働かなくても、我々は経験不足を補うために二日間働かなければなりません。二番目には技術です。我々は長時間労働をしているのだから、それを補うために、魚を運び入れるためのより優れた方法、より速い方法を見つけなければなりません。研究、調査、実験をしなければなりません。また新しい漁の仕方を確立しなければならないし、漁に関する幾つかの点を真剣に研究しなければなりません。そして餌、ライン、ラインの使い方、そしていろいろな海における船の使い方について研究しなければなりません。これらのことが全部研究され、そして実行に移されなければなりません。我々はこれらのことを真剣に考慮し、各分野について徹底的に計画を練らなければなりません。